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しとしと、しとしと と



雨が降っている。



当分外には出たくないな…。
湿気で通常の倍うねる黒髪をぐしゃぐしゃとやって、ギルバートは溜め息をついた。
ふと窓の外を見やれば木の下に霞む人影。
こんな雨の日に。
「ん?」
目を凝らしてハッとする。

灰色の世界に見覚えのある色がぽつりと見えた。

まさか。

「…な、何やってんだあいつは!?」
ギルバートが傘をひっつかんで急いで外に出るとすぐに木の下のベンチに座っているブレイクの姿が見えた。
木の下といっても、雨粒は葉や枝をすり抜けてしっとりと彼を濡らしていた。
しかし何も感じないのか、ただぼんやりと空から降ってくる雨粒達を見ているようだった。
「ブレイク!!」
呼べば、隻眼がゆっくりとこちらを見た。
雨のせいなのかお互いの顔がよく見えない。
その状況に何故か無性に苛立った。
「…ぁ、やぁ鴉。そんなに慌ててどうしたんデス?」
やや間を置いてブレイクが応える。
「お前こそ…何やってたんだこんな雨の中」
話している内に先ほどの苛立ちも雨に流されていく。
あとに残るのは、軽い虚しさ。

問われたブレイクはあぁ、と笑って
「綺麗だったので見惚れてたんですヨ」
そう言ってひらひらと袖を振って空を指差した。

何て事はない、それは予想の範囲内の返答で。

だけど何かが胸を締め付ける。

胸に沈む澱(おり)の正体はわからない。
ただ漠然と、早く連れ戻さなければならないと思った。

「…とにかく屋敷に戻るぞ。風邪を引く」
「うーん、そうですネェ。そろそろ体も冷えてきましたシ…」
「…お前その濡れ具合、そろそろってレベルじゃないぞ。大丈夫か?」
「平気ですヨー」
と応えてみるが、
(あー…なんだか体に力が入らない)
意志に反して正直な体にブレイクは悟られないように小さく溜め息をつく。
じゃあ行くぞ、といって歩き出そうとするギルバートにブレイクは後ろからワザと大きな声で呼びかける。
「レーイヴーン、屋敷までおぶってくだサーイ☆」
「な…なんだいきなり!これくらいの距離、自分で歩けるだろ!」
「ぶー!鴉冷たい!おぶってくれなきゃ屋敷に帰れませんヨー!」
「あーもーわかったわかった!」
いつも通り、ギルバートが折れて渋々戻ってくる。

「フフフ、可愛いなァ」
子供のように少しふてくされた顔になんだか愛しさがこみ上げてくる。

「ギルバート君」

「なんだ?」

…君を見ているとなんだか、これから先もずうっとこうして君のことを見ていられるような、そんな気持ちになってしまうよ。

そう心の中で呟いたつもりだったが、声に出てしまっていたのだろうか、気付けばブレイクはギルバートの腕の中にいた。

温かい。

あの頼りない小さな少年に、こんな風に抱き締められる日がくるとは思わなかった。

あぁ、時は流れている。

「大きくなりましたネェ…ギルバート君」
ブレイクはそう呟いて、ギルバートの背中をぽんぽんとまるで小さな子供をあやすような調子で軽く叩いた。
その優しさがギルバートの胸を痛める。
腕の中の温もりは未だ冷たく濡れていた。

「お前は…小さくなったよ」
「アハハ随分と生意気な口を……ッギルバート君?」
話の途中でいきなり強く込められた腕の力に息を詰まらせながら口を開きかけたブレイクは、そのまま目を丸くした。
「ど、どうしたんですカ?」
「…うるさい。お前が悲しいことばかり言うからだ」
「えー!ワタシのせいですカ!…ちょ、ちょっともう泣かないでくださいヨ~鴉ったら!」
「うるさいバカ…泣いてない!」
「も~、まるで大きな子供ですヨ。全く…君にそんな風に泣かれたら」


ワタシが泣けないでしょう?


そう言ってなんだかひどく哀しそうに笑うから、ギルバートはまた子供みたいに泣かなければならなかった。




雨粒を見ていた。

空から降ってきて、なんの躊躇いもなく次々と地に落ち消えていく彼らが

なんだかひどく美しく見えた。
















今回は視点がコロコロ変わって読みにくかったかと…すみませんorz
バカ!ていうギルバート可愛いよね!って言いたかっただけです^p^
あぁ、我ながらくどくなってしまた/(^o^)\
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柔らかな日差しが降り注ぐ部屋で白い猫が椅子に寝そべっている。
そして時折、薄手の白いシャツを軽く羽織っただけの背中をプルプルと震わせて普段より少しだけ高い切なげな声を出す。

「ぁ…フ……ちょ、もうちょっと…ぅんっ」
その細い背中を長い指が這う。
「……おい、あまり変な声を出すな」
「ン…やっ、ちょ痛いですってば!」
「ん、こうか?」
「はぁ…ッん…も、もういいデス」
「よくない!まだ半分しか終わってないぞ!」
「ぅ…アッ…も、いいデスってば…なんか逆に、疲れてきましたカラ…ン…ゥフッ…れ、鴉!いい加減にしなサイ!」
「…そ、そんなに下手か?」
オズには好評なのにな…このマッサージ。
なんとなく自信がなくなってきて尋ねると、いつもより少しだけ頬を染めた彼は何故か全身の毛を逆立てて威嚇しているようだった。
「ッ…下手とか以前に、君の手はなんかこう、くすぐったいんですヨ…」
「うっ……そう、なのか?」

せっかく腰を痛めたというから得意のマッサージを披露してやったのに、全く酷い言われようである。
ていうかくすぐったい、のか…。


特技が1つ減ったような気がして、ギルバートは小さく溜め息をついた。












はい、帽子屋さんを喘がせたかっただけです☆ニコッ
ギルは帽子屋さんのツボを確実に押さえるプロだよねって信じてる^^
鴉ブレは読むのは大好きだけど何故か自分では書けません…orz
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甘夏
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