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晴天。

雲ひとつなく、風もない。音もない。
目の前には見慣れたはずの垣根小路。
私は季節に合わない黒く長いコートを着込み、道の真ん中に突っ立っていた。
じりりと頭が焼ける。
眼鏡からずるりと汗が滴り落ちた。
真夏の庭、ぼんやりと陽炎が立つ中に

一面、白い薔薇が咲いている。

「レイムさ~ん」
振り向くと、やはり季節に合わないいつもの格好でザークシーズがひらひらと袖を振りながら走って来るのが見えた。
「いや~今日は暑いですネェ」
へらへらと喋るその姿に少し違和感を覚える。
私は今、なんと応えたのだろうか。
ザークシーズは私の返答に少し笑ってから、急にひょいと私の顔を覗き込んで
「ね、鬼ごっこしまショウ」
とにっこり笑った。
私は戸惑い首を振るが、ザークシーズは全く構わない様子で
「じゃあ最初はワタシが鬼デス。逃げてくだサイ、レイムさん☆」
と言って、私がまだ動いてもいないうちに即私の腕にしがみついた。
「ハイ、レイムさん捕まえター!次はレイムさんが鬼デスヨー♪」
そう言ってニヤリと笑う。
「ちょ、ちょっと待て!今のはなしだろう!」
思わずそう叫んで、私の腕に嬉しそうにしがみついている奴を捕まえようとするが、奴は案の定私の腕をするりと抜けると一目散に走り出した。
仕方がないので私も後ろを追い掛ける。
走りながらふと周りの景色に目をやる。

薔薇、バラ、ばら。

白い薔薇の壁は先へ先へと続く。
うちの屋敷に白い薔薇など咲いていただろうか。
なにか不吉な感じがした。

「不似合いでしょう?」

不意にザークシーズの声がして、私はドキリとして立ち止まる。
ザークシーズも私の数歩前でいつの間にやらこちらを向いて立ち止まっていた。
「うちに白い薔薇を植える習慣はありませんよ」
ザークシーズはそう言いながらゆっくりとまた歩き出す。
私はなんとなくその後ろをついて行く。
「みんな"紅"です」
そう言ってまた立ち止まると今度は急にしゃがんで背の低いなにかをそっと両腕で包み込んだ。
私はザークシーズに抱かれうずくまっているものを見て息を飲んだ。
それは片目から血を流し続ける、髪の長い彼――私が初めて出会った時のザークシーズ本人だった。

「ねぇレイムさん、似てるでしょう?」

白い薔薇はどう足掻いたところで赤く色付くはずもなく、しかし地に散る花びらは酸化しほのかに赤茶けて見えた。

白い薔薇の中で滲んでいく彼は遠い。








レイムさんの見た夢的な。
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