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ろうそくの灯がちりりと揺れる。
外とは真逆のひんやりと暗い廊下をゆっくりと踏みしめながら歩くと絨毯が小さく鳴った。
確かここだったかな…。
小さく呟いてドアノブに手をかける。
鍵がかかっていたので仕方なくエコー直伝ピッキング。
ごめんね。でも鍵をかけてる君が悪いんだよ。
それからエコー、やっぱりあの子は有能だ。
ほどなくしてドアが開いた。
なるべく音を立てないように慎重に開ける。
部屋のすみのベッドの上にはシーツにくるまるシーツより白い頭髪。
「寝てるの…?」
そっと近付いてみるとくぐもった吐息と暑さのせいかほんのりと色付いた頬が可愛らしい。
近付いて触れようとした瞬間、真っ白なシーツは舞い上がり景色が逆さまになって腕にぴりぴりと痛みが走った。
僕と帽子屋さんは形勢逆転。
今度は僕がベッドに寝ることになった。
喉元にはどこに隠していたのか杖が突き付けられている。
苦しそうに息を乱しながら、でも殺気だけはいつもの数割増しだ。
それがなんだかひどく可愛らしくて、僕は猫にでも乗られているような心地になった。
「なんだ、起きてたの」
「貴方が、来るまでは、寝て、たんですけどネェ…ハァ。」
ぶつりぶつりと苦しそうに単語をひとつずつ区切りながら言って、最後に大きな溜め息ひとつ。
それでようやく落ち着いたらしい。
喉元の杖が少し震えている。
「別に脅かすつもりはなかったんだけどね」
「じゃあどんなおつもりで来たんデス?まさか寝込みを襲われるとは思いませんでシタヨ」
「やだなぁ、まだ襲ってないよ」
そこで帽子屋さんは少し疲れたみたいに溜め息をついた。
「で、一体何の用デスカ」
「今日はどこにもいなかったから心配してたんだよ」
「質問に答えなサイ…、ッ」
さっきまで凄んでいた帽子屋さんの顔が少し歪む。
僕の喉元の杖を退けるとその手でこめかみを押さえた。
「頭痛いの?」
腕の力も大分抜けていたので僕は手を払うと、帽子屋さんの額に手を当てた。
「わ、帽子屋さん熱あるよ」
僕が声を上げると、熱が上がったのかもう気力が残ってないのか、朦朧とした顔で自分からユルユルと僕の肩の方に倒れかかってくる。
「…暑さにやられましてね…さぁもう帰って頂けませんカ」
"貴方といると治るものも治らない"と言わんばかりだ。
それにしては肩にもたれたまま動こうとしない。
こんな帽子屋さんは初めてだったから僕は少し疑心暗鬼になる。
もしかして僕を誰かと間違えてる?
だったらすごくムカつくんだけど。
だけどこんなこと考えてもしょうがないってことはわかっていた。
「僕は素直な子が好きなんだけどなぁ」
そう言ってそのままギュッと抱き締めてみた。
抵抗されるかと思ったけれど、帽子屋さんは腕の中で完全に力が抜けたみたいだった。
本当に具合悪いのかも…僕はなんだか宝物を見つけたみたいな気持ちになって、クスクスと笑った。
帽子屋さんは本当に面白い。
少し重い溜め息みたいな吐息とくったりと身を預けるその軽さが愛しくて、僕は彼の唇に自分のそれをそっと重ねた。

彼は僕のこの密かな告白を多分覚えていないんだろうけど。













ピュアキモ系を目指しましたw
実はレイブレ前提だったりする。
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